


今回は猫の嘔吐について話してみたいと思います。

嘔吐とは
嘔吐って何でしょうか?口からものを吐くことじゃないの?
という方が多いのではないでしょうか?
それは半分正解で、半分間違いです。
口からものを吐いてしまうのには、実は「嘔吐」と「吐出」があります。
「吐出」ってあまり聞きなれないかと思いますが、「嘔吐」との違いは・・・
「吐出」は口腔内又は食道内のものを吐き出すことで、「嘔吐」胃の内容物を吐き出すということです。
違いを整理してみましょう。
項目 | 嘔吐 | 吐出 |
---|---|---|
定義 | 胃の内容物を吐き出す | 食道や口内の内容物を吐き出す |
吐くときの動き | 吐く前にしきりに舌なめずり、腹部の収縮(えづき)がある | 突然出る、前触れがないことが多く反射的に吐く感じ |
吐出物 | 胃液を含む消化しかけの食べ物(胃液のみのこともある) | 食べたものがそのまま出てくる |
タイミング | 不定(食後~数時間後、原因によっては食べていなくても) | 食べた直後 |
原因 | 食べすぎ、毛玉、異物、感染症、内臓疾患など様々 | 食道炎、神経障害、食道の奇形(巨大食道症など)など |
猫は吐きやすい動物なので、単発の嘔吐で、その後元気であればあまり心配はないですが、頻回に吐くなどするときは注意が必要です。
猫が吐きやすい理由として、いくつか説があります。
毛玉を吐きやすくする。野生の名残で、獲物の毛や骨を吐きやすくするなど。
毛玉もひどいと、腸閉塞をおこすことがあるので侮れません。

嘔吐の種類
急性嘔吐・・・食べ過ぎ、毛玉、旅物が合わなかった、異物などが原因で起こります。1~数回で治まります。
慢性嘔吐・・・内臓疾患(腎臓・膵臓など)、胃腸疾患、アレルギー、腫瘍などで、数日~数週間にわたり続きます。急性嘔吐で胃腸が傷ついてずるずる慢性嘔吐に移行することもあります。
急性嘔吐で数回吐いていつも通りに戻れば、良いですが、吐き続ける場合、異物を飲み込んでしまった可能性もあるのですぐに動物病院に行きましょう。
慢性嘔吐の場合も病院に早めに行きましょう。特に頻度が多い場合は脱水してしまい急激に弱ってしまう場合があります。
嘔吐と一口に言っても原因は様々で、なかなか特定できないこともあります。特定できないまま治ってしまうこともあるし悩ましい症状です。

吐いたときに観察するポイント
・回数や頻度・・・どのくらいの時間間隔で何回吐いたか?
・状況・・・吐いたタイミングは食後どのくらい?直後?数時間後?食べたものは?普段と違うことをしていた?
・吐出物の内容・・・食べたものがそのまま?少し消化されてる?毛玉?
・嘔吐以外の症状・・・元気がない、食欲がない、下痢をしているなど
可能であれば、吐くときの様子を動画で撮影しておきましょう。あとは、吐いたものもできれば取っておくとよいと思います。
吐きすぎると、消化管に傷がついて血が混じることがあります。
うちの「もみじ」も嘔吐・下痢で苦しんだ時があり、その時は血が混じっていました。色々と検査しましたが、原因は分からず、対症療法で治りました。

自宅での対処方法
・餌を小分けで与える
吐いたのが単発だったり、餌を食べてしばらくして吐く(続かない)ということが多い場合は、餌を小分けにしてみましょう。ドライフードは胃の中で膨らむので一気に大量に食べると吐いてしまうことがあります。おなかの調子が悪いときは特に少量頻回がいいです。
・半日~1日の絶食絶水
一度胃腸を休めます。特に吐いているときは、新たに物を食べたり、水を飲むと吐いてしまいます。
特に吐くとのどが渇くので、水を飲んで吐いてを繰り返し脱水がどんどん進みます。水を飲んで吐いてしまう場合は、水も抜きましょう。
ただし、脱水に注意が必要ですので半日くらい様子を見て水が飲めない場合は、病院に早めに連れていき、必要に応じて点滴を受けさせましょう。
すぐに病院へ!!
次の場合は、すぐに病院に連れていくことをお勧めします。
・1日に何度も吐く、何日も続く
・異物誤飲が疑われる
・衰弱・痙攣している。
・嘔吐物に血が混じっている
特に異物誤飲については、早く吐かせる処置をすべきです。小腸に進んでしまうと、開腹処置が必要になる場合があります。

予防 日ごろからのケアについて
・フードを小分けにする・・・吐きやすい子は少量頻回の食事にしましょう。
・フードの変更について・・・急なフード変更を避け、少しずつ移行させましょう。吐きやすい子は消化器用の餌にしてみてもいいかもしれません。
・毛玉対策・・・ブラッシングをこまめにする。毛玉を吐きやすい子は毛玉ケアの餌を選択するのもいいかもしれません。
・定期的な健康診断・・・中高齢期になったら年に1回くらいは血液検査をすることをお勧めします。特に腎臓には注意が必要です。腎不全については別の機会にお話しさせていただければと思います。
・誤飲しそうなものを猫の届かない場所へ・・・特に「ひも」は注意が必要です。猫が本能的に好きなのでよく遊びますが、端を少し飲み込んでしまうと、猫の体の形態上そのまま飲み込んでしまいます。ちなみに「ひも」を飲み込んで腸閉塞をおこすと、レントゲンで特徴的な陰影がとられます(数珠状陰影)。
おわりに
猫は吐きやすいので、飼っているとちょいちょい出くわしますが(特に毛玉とか)、病気が紛れていることもありますので、油断せずに猫の状態をよく観察していく必要があると考えます。

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